本とゲームとサウナとうんち

ライターが書くブログです。本とゲームとサウナとときどきうんちが出てくるブログです。

2018-01-01から1年間の記事一覧

当たり前のことをもう一度考え直すー観察の練習(菅俊一)を読んでー

観察とは何か。 本書の中で著者はこう言っている。 観察とは、日常にある違和感に気づくこと。 この本を読んで僕が思った観察はこうだ。観察とは、当たり前のことをもう一度考え直すこと。 これは著者の言う「違和感」に気づくための過程とも言える。目の前…

親子は、なりたくてなるものではない ー私の男(桜庭一樹)を読んでー

●直木賞受賞作 僕はあまり恋愛小説を読まない。人の恋愛に興味がなく、小説で語られる恋愛にそれほど面白みを感じないからだ。 過去に本屋で何度も「私の男」を手に取った。しかしレジに持って行くことはなかった。その理由が裏表紙に「愛に飢えた親子が超え…

ロックマンをマリオのようにプレイしてはいけない〜ロックマン完全制覇プロジェクトを終えて〜

カプコンを代表するアクションゲーム「ロックマン」が今年30周年を迎える。そんな記念すべき年にナンバリングタイトルの最新作となる「ロックマン11」が、前作「ロックマン10」から約8年ぶりに発売される。 ●ロックマンとの出会い 初代ロックマンが発…

僕が短歌を詠む理由ーはじめての短歌(穂村弘)を読んでー

ある朝通勤電車の中で突然思った。 短歌を詠もう。 なぜか分からない。いつもと同じ代わり映えのしない朝を変えたかったのだと思う。その日が月曜日だったことも大きい。またいつもの一週間が始まる。この絶望をどうにか変えたかった。というより忘れたかっ…

人の背景になることー夕子ちゃんの近道(長嶋有)を読んでー

小説ってなんだろう。どんな小説を読みたいだろう。もし自分が小説を書くとしたら何を書きたいだろう。そんなことを考えていた。答えがあるわけではないが、それを見つけたいと思っていた。そして僕が出した答えは「生き方」だった。小説は「生き方」を描い…

すべてを理解できるなんて思わないようにー「犬婿入り」(多和田葉子)を読んでー

わからない。なぜ太郎はみちこの家に来たのか。電報とは何か。なぜみちこはいきなり現れた太郎に動じないのか。なぜ太郎は犬に噛まれて人が変わったのか、松原とはゲイ仲間なのか。なぜみつこは扶希子に固執するのか。なぜ太郎と松原は一緒に、そしてみつこ…

顔は弱いー「ペルソナ」(多和田葉子)を読んでー

自分が自分であることを定義している要素は何だろうか。顔、体型、声、名前、血縁、国籍、言語、性別、いろいろと考えられるが、おそらくほとんどの人が「顔」で自分が自分であることを確認していると思う。自分の顔は自分のものであることに間違いはないが…

太陽の塔に勝つためにー太陽の塔関連本二冊(平野暁臣)を読んでー

僕の岡本太郎歴はそれほど長くはない。 きっかけはNHKのドラマだった。 2011年2月に岡本太郎生誕百周年を記念して作られた「太郎の塔」というドラマを見て一気に岡本太郎に取り憑かれた。ドラマを見る以前から岡本太郎のことは知っていた。太陽の塔のこ…

うんち小噺「呪文」

酒を飲んで家に帰り、その日のうちに風呂に入れたためしがない。 目が覚めるとパンツ一枚で寝ていた。 時計は六時四十五分。そろそろ起きて風呂に入らないと遅刻してしまう。タオルとパンツを取って風呂に入った。 髪を乾かしテレビをつけると画面の左斜め上…

書かずにはいられない、それが小説家だ。ー鳩の撃退法(佐藤正午)を読んでー

佐藤正午は読ませる作家だ。読ませるとはどういうことか。例えるなら「わんこそば」のようなものだ。食べ終わったと思ったら次のそばがお椀に入れられている。そして口に運ぶ、するとまたそばが入れられる。もういいだろうと思うと次の文章が待っている。そ…

まだ遅くはない ーサラバ(西加奈子)を読んでー

久しぶりに長編を読んだ。西加奈子のサラバだ。本屋で一行目を立ち読みしすぐにレジに向かった。 「僕はこの世界に左足から登場した」 こんな一行目の小説が面白くないわけがないという期待と、どうやったらこんな一行目が書けるんだよという嫉妬が混じりな…

サウナ小噺「十二分」

大抵のサウナ室の壁には十二分時計という特殊な時計が掛けてある。十二分時計は時刻ではなく十二分という時間を計るためだけにある。十二分時計には秒針と分針の二つの針があり、秒針が一周すると分針が一つ進む。秒針が十二周すると分針は一周して元の位置…

無料の価値とは

映画や漫画を見たり読んだりするときにハズレを引くということがなくなった。事前にネットで情報が得られ、口コミなどですでにそれを体験した人たちの感想を見ることができるようになったからだ。面白そうなら見ればいい、面白くなさそうであればやめればい…

縦と横、どっちがわくわくするか

事故や災害などのニュースで最近よく目にするのが視聴者提供の動画だ。スマホの普及によって誰でも動画を撮影できるようになり、一人一人がニュースの発信者になれる。テレビ局もカメラマンを派遣することなく、直後の生々しい映像を提供してもらえるので重…

仕事も小説も人であるけれど ーとにかくうちに帰ります(津村記久子)を読んでー

朝起きて顔を洗って朝ご飯のお茶漬けを食べて天気予報を確認して歯を磨いて家を出て電車に乗って職場に向かう。職場に着いたらパソコンを開いて文字を書き定時になったのを確認したら駅までの帰り道あるいはプラットホームで会社の人と鉢合わせすることがな…

考えない人は簡単にコントロールされてしまう ー1984年(ジョージ・オーウェル)を読んでー

「1984年」は1949年にジョージ・オーウェルによって書かれた小説だ。タイトルの通り、1949年当時からみた未来である1984年の世界を描いている。 とある革命によって民主主義が崩壊し、社会主義、全体主義が色濃くなった世界はオセアニア、ユ…

笑って死ぬのはいいことか ー「電車道」(磯崎憲一郎)を読んでー

これは二人の男の生き方を描いた小説だ。 ひとりは四十歳を目前にしてそれまで営んでいた薬屋や家族を突然捨て山に籠もる生活を始める。その土地で知り合った子供たちに様々なことを教えているうちにそこで私塾を開き、後に学校の校長になる。 もう一人は銀…

「人生を研ぎ澄ませろ」破獄を読んで

もし何か罪を犯して刑務所に入ったとする。そのとき脱獄しようという気持ちになるだろうか。おそらくならないだろう。デジタルキー、監視カメラ、分厚いコンクリートの壁、現代の刑務所の警備がどのようなものなのかは知らないが、精一杯の努力を尽くしたと…